「鳥さん」の認知症ブログ

 認知症を患う方との関りを深め、十数年・・・まとめていた記録を見える形で残そうと考え、唐突ですがブログを始めてみました・・・

 試行錯誤の記録ですが、まずは「気になった記録」、「思い出のある記録」から残してみようと思っています。

 何かの参考になるものではなく、私自身の十数年の振り返り、記憶の整理としてスタート致します。

№42 食事支援の認知機能のアセスメント視点・方法        2021年8月7日(土)

 食事支援の様子ですが、以前から主食は全量摂取することが多く見られていましたが、副食の摂取量が少なく原因のアセスメントを進めていましたが、認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語症、実行機能障害)とその中に含まれる注意障害(持続的注意、配分的注意、選択的注意、転換的注意)、環境因子(外部環境・内部環境)の影響による食事量の変動が真因と考えています。

 特に注意障害により、食べている食事以外に注意を向けることが苦手となり(選択的注意)、その結果一品を集中して食べていると考えます。また、副食は主食と違い、様々なものが混ざり、加工されており何であるかの認識がしづらいとも考えます。(失認)主食のご飯は白く、加工されることも少ないため、食事の中で一番認識されやすい、又は、一番見慣れていることから安定した食事摂取量になっていると考えています。

 デイサービスでは、食事支援の中に注意障害approach method、手続き記憶approach method、、意欲向上approach methodを徹底していることで食事量の安定、水分量の安定による身体の内部環境を整える、基礎的支援を丁寧に進めていきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症の方の食事の場面は、その方の認知症状が出やすい環境と考えています。一品を集中して食べる方、食事を食べ始めない方、小鉢を残す方、様々な場面が見られると思います。

「食事は、私たちが思っている以上に

           複雑な動作と感じています。」

                              記憶障害同様、気づきにくい感覚です・・・

№41 全くサービスを利用していない方への信頼関係の構築の視点  2021年8月4日(水)

 コミュニケーションの基本として意欲向上approach methodや失語症approach method脱抑制approach methodを活用します。

 環境に慣れないご利用者様とのコミュニケーションでは、距離感を大切にするためパーソナルゾーン(こころの縄張り=快不快の距離)を意識し緊張のない距離感からコミュニケーションを始めます。S様の場合、面倒見が良く社交的な一面も持っており、パーソナルゾーンは狭い(距離感は近い)と考えます。また、利用時に意識的に「褒める」「感謝の気持ちを伝える」「ありがとう」などのコミュニケーションを多く取り入れることで、人は”必要とされている”、”褒められる”ことなどを繰り返すことで、こころの欲求が上がり”こころが元気”になっていきます。

 ”こころが元気”になると人は自然と自発性が増し、欲求階層も上がり、意欲が向上していきます。人は意欲が向上していくと、自己実現(自己選択・自己決定)へと行動していくため、自然と”身体も元気”になっていきます。コミュニケーションで専門支援を進めることで、日常生活を元気に暮らせる基礎の構築に繋げたいと考えています。

 デイサービスでは、5つの専門支援を丁寧に進めることで、デイサービスが「安心できる場所」、「好きな場所」、「楽しい場所」になれるよう支援していきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 サービスを初めてご利用する方で、安定した利用までとても苦労をした方でした。一人暮らしでしっかり者の方ほど初めてのサービスへの導入は難しいと感じています・・・信頼したと決めることはご利用者様であり、どうすればと頭を練りました・・・

「コミュニケーションとアセスメントの技術、

                  ピカピカに磨きました!」

№40 易怒・焦燥などの行動・心理症状のアセスメント視点     2021年8月1日(日)

 認知症状の様子ですが、利用時に眠気、疲労感などから見当識障害(失見当)により妄想などの行動・心理症状に派生することもやや増加傾向と考えます。以前から妄想による混乱は見られていましたが、声を荒げる頻度が増していることを考えると、脱抑制など前頭葉の活動が低下し認知症状の変化も考えられます。

 易怒などの行動・心理症状は、認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語、実行機能障害)や環境因子(外部環境=物質的環境、人的ストレス 内部環境=身体的不調、心理的苦痛)などから派生するため、環境因子の修正が必要と考えています。認知症の中核症状を治すことは物理的に不可能ですが、環境因子を調整(治す)することは可能であり、環境因子の微調整で状態は落ち着くと考えています。

 デイサービスでは、内部環境因子を整える基礎である生理的欲求の一つの水分摂取量はとても大切と考えています。6月は水分摂取量が平均450ccほどとなっており、5月の平均摂取量の500ccよりも減少しています。O様は、便秘により情動が不安定になる傾向が強いため、水分摂取量の減少は状態の変化、行動・心理症状の悪化へのリスクが高くなると考えます。また、水分摂取量が減少することは脱水症などから派生する、慢性的な疲労感や倦怠感などの軽減も繋がり、結果として安定して認知機能に繋がると考えており、生理的欲求(食事・水分、排泄、睡眠)が満たされる支援を丁寧に進めていきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 昔の私は、知識が付き、認知症の疾患や症状への視点が強く、症状へのアプローチをしている時期もありました。しかし、上手くいかないことも多く、とても悩んだことを今でも覚えています。その時に学んだことは

    「見えない部分に気がつく!」

    「その人(人間)を観る!」

 

№39 強い入浴拒否のご利用者様のアセスメント視点       2021年7月29日(木)

 利用開始当初から入浴支援への強い拒否が見ら、アセスメントを進めています。K様の入浴支援を進めるうえで大切な要素として、”不安の軽減”、”信頼関係の構築”が入浴拒否のキーワードと考えており、

 6月は近所に住む女性職員が入浴支援をおこないアセスメントを進めています。人間は、身近な共通点(故郷が一緒、学校が一緒etc)があることで、親近感から心の距離(パーソナル・ゾーン=こころの縄張り、快・不快の距離)が近くなり、信頼関係が構築されやすくなります。

 近所に住む女性職員は、K様が犬の散歩で通る場所に住んでおり、地域の草刈りなどの行事でも一緒になるなど共通点が多くあると考え支援を実施しています。K様と職員との会話から考察すると、職員との距離感は「あー・・・そうなの」と、片手間で聞いている程度の感覚と考えます。大切なことは、「えっ!そうだったの!」など驚きやインパクトのある情報(会話)をK様に伝えることが、”こころの距離”を短くすると考えています。K様が職員に話した「でもね、あの人好き嫌いハッキリしているんだよ。嫌いな人とは絶対に話さないの…」などの会話を職員が先に伝えることで、「お父さんのことをとても良く知っている人なんだ」との驚きを与える会話がコミュニケーションのポイントになると考えています。

 デイサービスでは、K様の自己実現(自己選択・自己決定)を中心に支援し、”無理なく”、”安心して”、”気持ちよく”お風呂に入れるよう関係性の構築、安心できる環境の提供を進めていきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 人と人との関係性を築くことは、時間もかかりますし、とても難しいと日頃から感じています。私たちがどんなに好意をもっていても、相手に決定権があることを考えると悩み、辛い時もあります・・・そんな時

「コミュニケーションは技術と知りました。

                   学ぶしかありません!」

№38 利用開始1ヶ月後から自宅での言動に変化したアセスメント視点 2021年7月26日(月)

 4月下旬からデイサービス利用開始となっていますが、利用初日から表情は柔らかく焦燥や拒否などの行動・心理症状も見られず良い状態で過ごしています。

 2回目以降の利用時でも言動はリラックスしており、他利用者様とも自ら談笑するなど社交性も見られています。利用時に他利用者様とのトラブルに繋がる言動や職員に対して強い口調は全く見られていません。O様は、デイサービスがとても良いイメージであると考え、利用日でない日い自転車で2回ほど立ち寄り、挨拶をして帰っています。職員が、お茶を飲んでいって欲しいと伝えるも、「いい。いい。」と笑顔で帰っています。利用日でもない日に自転車で来る行動は、嫌な場所であれば絶対にない行動と考え、O様にとって”ほうとく”が好きな場所の一つになっていると考えます。

 利用から1ヶ月が経ちデイサービス利用後、自宅で奥様を机に押し付ける行動があったと連絡を受けています。

 O様の行動を考察すると、デイサービス利用に伴い意欲が向上し元気になり、身体だけでなく”こころも元気”になっていると考えます。人は”こころが元気”になると「自分らしさ」を求め欲求階層が上がり様々な行動の変化をおこします。

 デイサービス利用開始時のO様の欲求階層は、生理的欲求階層から安全・安心の欲求階層にあったと考えます。病気により転倒なども繰り返し、身体の自由が利かないなど健康への不安(健康な身体の喪失体験)を抱えていたと考えます。また、好きであったゴルフも行けなくなり趣味の喪失体験、様々なことができなくなっており自信の喪失もしており、様々な喪失体験により意欲が減退し、こころが元気でなかったと考えます。しかし、デイサービスに通う中で、職員に褒められ、趣味のゴルフの話を沢山することや、尊敬や労いの言葉を多くかけられたこと(意欲向上approach methodで、デイサービスでは欲求階層が社会的欲求階層(愛情・所属の欲求)に上がっていると考えます。自宅では安全・安心の欲求階層から一気に尊厳・自尊心の欲求階層にまで上がったことで、一家の家長である自負が戻り、自尊心を傷つけられる言動などに過敏に反応していると考えます。

 ご家族の心配の一つである、「デイサービスにイヤイヤ行くことで気を使い、気づかれなどから帰宅すると奥様に対して強い言動に繋がっているのではないか」などの心配をしていると考えますが、上記の言動からデイサービスは、好きな場所の一つになっていると考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

 利用日でもない日に自転車で顔を出してくれるなど、とても嬉しい出来事があったご利用者様でした。デイサービスでもとても紳士的で、優しい方でした。

 ご自宅での言動には必ず理由がある・・・

「人間の行動原則の一つである欲求階層、

                   大切な知識です・・・」

№37 記憶の逆行性喪失によるアセスメントとアプローチ     2021年7月23日(金)

 認知症状の変化として、記憶の逆行性喪失により場所の見当識障害が強く見られています。

 以前から関○の自宅に居ても、「○殿○の実家に帰る」と見当識障害は顕著に見られていましたが、デイサービスから帰宅後、自宅の前に着いても「家じゃない・・・」と発言する頻度が増加しています。

 職員が自宅ですよと伝えるも「違う」と返答し、視覚からのアプローチ(メラビアンノ法則)も含め、表札の名前を示しますが「見えない・・・」と返答し、RO(リアリティ・オリエンテーション=現実見当識訓練)の猜疑心は改善されずROが有効となっていません。

 玄関を開け、奥様の顔を見て「あー!家だ・・・母ちゃんだ!」と現実に戻っています。ROもその日の状態によって変化しており、有効なROのアセスメントが必要と考えています。また、場所の見当識障害の真因は、記憶の逆行性喪失が影響しており、記憶障害へのROの修正も必要と考えています。

 A様の記憶は、記憶の逆行により古い記憶である○殿○の記憶が鮮明になることが多いと考えています。A様の発言からも「○殿○に帰る」との発言が多いことが、現在の頭の中の記憶が○殿○であることを裏付けています。古い記憶の○殿○から現在に近い記憶に戻す声掛けROのキーワードとして、”○○高校の数学の先生”、”囲碁段の先生”が有効なキーワードと考えます。

 A様の人生のアイデンティティ(A様の人生とは、又はA様らしさとは)であり、強烈に記憶の刻み込まれていることと考えます。そのキーワードの声かけを徹底することで、記憶の逆行性喪失は軽減され、記憶障害から派生する帰宅願望、徘徊、焦燥、易怒、暴言などの行動・心理症状に変化が出ると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症の方の記憶障害は、多くの方に見られており、日々の生活でも多くの問題に繋がる症状と考えています。「家に居るのに帰る・・・」と聞くと「何で?」と思う介護者は多いと思います・・・

「記憶の理解が深まると、ぼやけていた視界が

              急に見える感覚を受けます・・・」

№36  環境因子の影響による言動の変化のアセスメント視点     2021年7月20日(火)

 自宅での気になる変化として、財布にしまってあったカギの紛失、デイサービスのバックのカギが見当たらないことが増える、セットした薬が稀に紛失する、他県の娘様の所に行く発言などの言動が見られるようになっています。

 言動の変化を考察すると、環境因子の影響や認知機能の変化が大きいと考えます。環境の変化として、外部環境の物質的環境と心理的苦痛の影響が強く、5月に入り”心地よい気候”(物質的環境)となったことで、”気持ちがウキウキ”(心理的苦痛)し、”他県の娘様の所まで遊びに行きたい”欲求が生まれ娘様に訴えていると考えます。

 マズローの欲求階層の自己実現(自己決定・自己選択=私はこうしたい)に向かっており、O様の欲求階層はとても高くなっており、様々な言動の変化に派生していると考えます。欲求階層が高いことで精神的欲求が強くなり、その行動(人は欲求によって行動する)が認知機能の状態と密接に絡み合うことで、デイサービスのバックのカギが見当たらないなどに繋がっています。ご家族の準備したデイサービスのバックに革の紐でカギを縫い付けていますが、外出するウキウキした気持ちから「違うバックで出かけたい」などの欲求が生まれバックを変えますが、認知症の主症状である記憶障害の影響から”バックを変えたことを忘れてしまう”や”バックをどこに置いたか忘れてしまう”など、様々な物が紛失していきます。

 現在の状況は、特に環境因子の影響が強く様々な問題が派生していますが、暑い夏などになると言動にも変化が出ると考えています。私たちもそうですが、春先の気持ちの良い季節には、「どこかに出かけたい」など少しウキウキした気持ちになると思います。暑い夏になると「今日も暑いから嫌だね・・・」と、気持ちも滅入り行動も制限していると思います。環境因子によって私たちの行動は大きく変化し影響も受けていると考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

 毎年感じていますが、冬から春に季節が変わるとき、ご利用者様の言動が大きく変わり、ご家族の心配も多くなる季節と感じています。

    「私たちも動物なんだ!」

                   とても当たり前なことなのですが・・・改めて・・・

№35 レビー小体型認知症の方の気持ちの変化への支援       2021年7月17日(土)

 以前より自分自身に余裕がなくなり、不安が徐々に強くなっていると考えます。不安が強くなっているサインの一つとして、トイレの回数が外出前や外出中に多くなっていることが挙げられます。

 K様の心理として、「トイレの失敗はしたくない」と強く考えており、失敗をしないための予防としてトイレに繰り返し行くことで回数が増加しています。K様の内部環境因子の心理的苦痛(不安、心配etcが大きく影響していると考えますが、真因は健康な身体の喪失、自信の喪失など喪失体験により欲求階層が不安定になっていると考えます。

 健康な身体の喪失では、5本足の靴下が上手く履けないこと、洋服が上手く着れないこと、髪の毛が上手く洗えないことなど、以前は出来ていたことが出来なくなっていることが、現状のできなくなっている自分自身への理解が深まり”ショック”や”情けない”などの気持ちから気持ちの変化に派生してると考えます。

 デイサービスでの対応として、現状のK様の欲求階層は安全・安心の欲求が以前より少し低下していると考え、意欲向上approach methodが一番大切と考えています。

 意欲向上approach methodとは、”褒める”、”感謝の気持ちを伝える”、”尊敬の念を持ち接する”、”好きなことだけをおこなう”などを職員が統一しておこなうことで、K様の”こころの欲求階層”にも変化が派生し、「今の自分でもいい」や「出来ることだけやろう」と自分自身を認め受け入れ、こころの欲求階層が上がることで新しいことへの興味・関心が高くなり、デイサービスへの活動の変化にも繋がっていくと考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 ご利用者様の言動の変化は、こころの動きと大きく関わっていると多く感じています。注意深くアセスメントを進めていると、多くのことに気がつきます。不思議や違和感である行動も

「私たちも同じ行動を取っている・・・

               一緒だった・・・」

                                       と感じています・・・

№34 食事支援の変化のアセスメントと原因の考察        2021年7月14日(水)

 食事への欲求が高く、食事を残すことが少なかった方でしたが、ご家族から「ご飯を残す事があって・・・」と報告を受けいています。

 利用時の行動観察からアセスメントを進めていましたが、デイサービスでは普段と変わりなく全量摂取しています。おやつや水分摂取でも大きな変化は見られていませんが、K様が大好きな食事を残すことはとても心配であり、認知症の変化など何かのサインとも考えています。

 食事支援での認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語、実行機能障害)のアセスメントをしていますが、失行(身体は元気ですが、物などが上手く使えないこと)、失認(目は悪くないですが、物が何かわからないこと)は見られず、実行機能障害(物事を順序立てる能力=食事を食べる手順)にも大きな変化は見られていません。失語(言葉の理解、発語、文字を書く、文字を読む)も職員の声かけを理解し、他利用者様にも「食べなさいよ」など普段と変わらず、認知症の中核症状に変化は見られていません。また、注意障害(持続的注意、配分的注意、選択的注意、転換的注意)の影響から1品を集中して摂取することもないため、注意の障害の影響、変化も見られていないと考えます。認知症の中核症状の変化が見られていないため、言動の変化は環境因子の影響が強いと考察しています。

 環境因子の内部環境である、身体的不調(眠気、疲労、倦怠感、熱感etcや心理的苦痛(食欲減退、不安、焦燥etcが原因と考えますが、K様の性格などを考えると心理的苦痛は考えずらく、身体的不調の眠気などが考えられます。眠気は睡眠障害から派生しているため、生活リズムのアセスメント、睡眠障害への基礎的なアプローチも必要と考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 利用開始当初から食事への欲求が高く、食事を残すこと一度もなかった方の変化でとても心配したことを思い出します。疾患(認知症)による影響、環境因子による影響、様々な視点によるアセスメントからご利用者様の現状が見えてきました。

アセスメントが苦手であり、

     丁寧に教わる機会が必要と感じます・・・

 

№33 高齢者の心理や認知症の症状によって派生する情動の変化  2021年7月11日(日)

 体調不良から回復し利用再開となっていますが、少し気になる言動が見られています。以前から緩やかに見られてい症状ですが、情動(一瞬の感情の動き)が不安定になることが見られ、職員や他利用者様に対し強い口調が見られています。ご家族、ケアマネージャーの話でも家事の話をすると焦燥感や強い口調が聞かれており、デイサービスで見られる情動が不安定になる頻度から考察すると、自宅では顕著に見られていると考えます。

 情動が不安定になる原因として、自信の喪失が考えられます。O様は、知識も豊富で様々な経験も積み上げ、仕事と家事、子育てをこなしてきた心の強い女性と考えます。特に仕事では人に指導をする立場も長く、様々な苦労を重ねてきたとも考えます。そのような人生経験(バックグランド=人生歴)を経て、認知症という病気になり、高齢となったことも重なり、今までできていたことができなくなる状況から、”情けない”や”なぜ”などの思いが強くなり、自分自身に対しても苛立ちを感じていると考えます。

 そのような心理状況で、ご家族や他者から自尊心に触れる言葉を投げかけられたとき、自分を守ろうとする防衛機制が働き”攻撃的言動”に派生していると考えます。デイサービスでは、O様の「こころの動き」を”察し”、”感じる”ことで、不安や緊張している気持ちを少しでも和らげることができれば、デイサービスやご自宅での言動に変化が出ると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症の方だけでなく、高齢の方と接する際、とても大切なことだと感じています。しかし、多くの人は、年を取った時の体験をしていないため、高齢の方の気持ちへの理解がしずらいとも感じています。私もそのひとりです・・・

「体験できないことを理解するコツ・・・

           教えて頂きたいです・・・」

№32 緩やかな認知機能の変化のサインへの気づきとアセスメント  2021年7月8日(木)

 気になる変化として、朝の送迎時の奥様とのやり取り時に焦燥感など情動が不安定になっていること、午後や帰宅時の多動傾向がやや頻回になっていることが挙げられます。

 ご自宅での様子を奥様より確認すると、最近デイサービスに行くことを嫌がることが増え、抑肝散などお薬への拒否も強くなっていることを聞いています。先月の報告書でも伝えていますが、現在のS様は、障害の受容過程の中の”否定期”、”混乱期”にあると考えています。「こんな自分が情けない」や「なんでこうなってしまったのか」など、様々な葛藤から欲求階層も低くなり、自分自身にも余裕がなくなり情動が不安定になるなどの行動・心理症状に派生していると考えます。

 対応の基礎として、意欲向上approach methodを徹底することで”こころの欲求階層”が上がり、現在の自分自身を受けられることが大切と考えています。嫌なことは極力しないことが大切であり、ご家族はS様にとって一番の理解者であることも重要になります。環境が整うことで”こころの欲求階層”は上がり、障害の受容過程も変化することで、焦燥や拒否などの行動・心理症状の言動の変化が見られると考えています。

 情動が不安定になっている原因の一つとして、来月の旅行も影響していると考えています。旅行に行くことで、「迷惑をかけないか」や「大丈夫であるか」など、様々な葛藤から不安が強くなり、落ち着きがなくなり、怒りやすくなっているとも考えます。旅行が終わった際、ストレスからの解放感などから気持ちがスッキリし、言動の変化や欲求階層の変化が見られると考えています。デイサービスでは、ご家族とデイサービスでの状況やご自宅での状況などの情報を密に共有することで、徐々に”こころの欲求階層”に変化が出ればと考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 小さな変化は、環境因子、中核症状などの変化から派生するため、どの因子から派生しているかのアセスメントがとても重要となります。

 アセスメント視点のカギは・・・

 「バックグランド(背景)、

                原因の芽が見つかります!」

№31 とても強い入浴拒否の方のアセスメント視点 2021年7月5日(月)

 入浴支援の様子ですが、PLA メソッドPersonLife Asessment methodによる入浴拒否の評価として、行動・心理症状派生スケールでは、認知症の中核症状である記憶障害(お風呂に入っていることを忘れてしまう)がトリガーとなっています。環境因子では、外部環境因子の物質的環境(デイサービスのお風呂)、人的ストレス(職員)がトリガーとなっています。内部環境因子では、心理的苦痛(面倒くさい、羞恥心)などがトリガーとなっています。

 派生スケールの評価から、4項目(記憶障害、物質的環境、人的ストレス、人的ストレス)が原因となっており、4項目にアプローチをかけることが入浴拒否の軽減に繋がる評価となっています。人の欲求階層の評価では、安全・安心の欲求階層から社会的欲求階層にあると考え、不安の軽減や安心できる関係性の構築へのアプローチが有効な支援である評価となっています。

 デイサービスでは、O様の自己実現(自己選択・自己決定)を中心に支援し、”無理なく”、”安心して”、”気持ちよく”お風呂に入れるよう関係性の構築、安心できる環境の提供を進めていきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 利用開始当初から入浴拒否が強く、他のデイサービスでも入浴への課題があった方です。しかし、今ではほぼ全ての利用日に入浴しており課題を克服できた感じています。

 「体験を繰り返すこと、

      多くのことを得られると実感しました!」

№30 見当識障害による混乱、拒否などのアセスメントと対応方法  2021年7月2日(金)

 朝の送迎時、自宅に行くと甥っ子のお嫁様と一緒にいましたが、認知症の中核症状である人物の見当識障害から猜疑心や不安が強くなり、デイサービス拒否が見られています。

 T様の発言内容として「なにさ!あんた誰よ!知らないよ!・・どこにも行かないよ!お父さんそんな事言わないよ!全く何言ってんの!いい加減なことばっかり言って!・・ここは私の家だからどこにも行くわけないよ!何言ってんのよ!人を馬鹿にして・・・」と送迎の職員に訴えています。

 原因を考察すると、記憶の逆行性消失(記憶が逆行すること=昔の記憶が鮮明になること)により様々なことを忘れてしまいます。日常生活では、季節や曜日、トイレの場所や家の場所など、私たちには「なぜ?」と理解が難しいことも多々ありますが、家族の顔も忘れてしまうのです。家族の顔も忘れてしまうのであれば、時々会う親戚や友人、近所の人の顔は忘れ、覚えていことの方が自然と考えます。

 朝の状態は、親戚の顔を覚えていないこと(人物の見当識障害=中核症状「認知症の主症状」)で、親戚の方が不審者となり、不審者がいることで不安や猜疑心が強くなり、一時的に認知機能が低下しデイサービス拒否の行動・心理症状に派生したと考えます。

 状態の改善の初期として、T様の気分を落ち着かせる対応が大切であり、親戚の方には見えない場所に移動してもらい30分ほど一人の時間を作り気持ちのリセットをしています。また、職員が呼び鈴を鳴らしても、親戚の方は出てこないようお願いし、職員が直接、T様に説明するよう再アプローチの環境を整えています。

 職員が自宅に行き、呼び鈴を鳴らすとT様の声が聞こえ「何?誰か来たよ・・・」と玄関まで来ています。職員が笑顔で説明すると表情は柔らかく「そうなの」と理解をする発言が聞かれますが、居間に居る親戚の方を指さし「この人が居るから・・・」との返答が聞かれ、靴を履く動作が止まっています。職員が親戚の方に一緒に出ることを伝え、「出るから大丈夫ですよ」と伝えると、普段と変わらず靴を履き、職員と一緒に送迎車まで移動しています。その後は普段と変わらず利用となっています。

「鳥さんからの一言」・・・

 ご家族が急に体調が悪くなり、ご親族が対応しとても困ったいたことを今でも覚えています。自宅に一人で居ることが難しく、どうしてもデイサービスに来てほしかったこともあり、とても焦ったことを思い出します。

 「安心できる環境の構築、そのヒントは

        普段の生活環境と気がつきました。」

№29  脳血管認知症の方の利用初日のアセスメント視点「中核症状 編」2021年6月29日(火)

 ●月●●日から利用開始となっています。朝の送迎で自宅に行くと奥様、娘様と一緒に玄関に出てくる。職員が挨拶すると吃音(どもる事)は聞かれるが、返答が見られています。車は突き当りの左側の自宅前に停めてるが、特に気にする様子もなく乗車しています。車内では、職員とのコミュニケーションは見られ、自ら窓を開け「暑いから・・・」と環境を調整する姿も見られています。朝の送迎時では、デイサービスへの拒否や不機嫌な様子もなく出発しています。

 施設到着後、躊躇する言動もなく施設内に入っています。吃音など失語症状が気になるため、バイタル測定時など認知症の中核症状(主症状=記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語、実行障害)のアセスメントを進めています。

 記憶障害(忘れてしまう事)では、記憶の逆行性喪失(記憶の逆行=古い記憶が鮮明なること)は殆ど見られず、即時記憶(数秒から数分前の記憶)、近日記憶(数日前の記憶)、長期記憶(昔の記憶=古い記憶)はコミュニケーションなどから残っているとことが多いと考えます。デイサービスでの日付の確認の際、10分前の日付、曜日はしっかり覚えていること、現役時代のことを迷わずに話すこと、帰宅後に奥様に「ゴルフの話をした」や「ご飯が美味しかった」などを話しており、記憶障害は軽度と考えます。

 見当識障害場所・時間・人物の見当がつかないこと)では、場所(自宅の場所、トイレの場所、寝室の場所etc時間(日付、曜日、時間、朝・夕etc人物(夫、子供、近所の人etcの見当は時間の見当識以外は殆ど見られていると考えます。デイサービスでは、毎朝日付の確認(時間の見当識障害)をしていますが、K様は「8月」と大きな声で答えており、季節感(時間の見当識)などが分からず時間の見当識障害は見られています。1日の利用のため現状では何とも言えませんが、継続した経過観察を進めていきます。

 失認(見えているのに物の認識ができないこと)では、利用時では気になる言動もなく失認の症状は見られていないと考えます。

 失行(身体は動くが物の使い方や動作ができないこと)では、朝のラジオ体操では、音楽に合わせおこなうことができず、肢節運動失行(慣れ親しんだ動作や運動ができないこと)が見られています。その他の動作で行動観察からアセスメントを進めていますが、気になる失行は見られていないと考えます。

 失語症状言葉の理解、発語、文字を読む、書く)では、吃音があることから言葉を発する障害が見られていると考えます。言葉の理解では、職員の語義(言葉の意味)をしっかり理解しており、言葉の理解は殆ど見られていると考えますが、職員の言葉を腹唱する反響言語も聞かれており、理解していないことも時々あると考えています。失語症のアセスメントからブローカー失語と考察しています。

 実行機能障害(物事を順序だてて進める能力)では、排泄の手順などに迷うこともなくおこなっており、日常生活や動作全般では見られていないと考えます。認知症状は現状では、記憶障害などは軽度と考えていますが、失語症状が一番顕著に見られる症状と考え、失語症approach methodが有効と考えています。引き続き、認知症状のアセスメントを進め支援方法の構築を図っていきます。

 行動観察からK様の人柄のアセスメントを考察すると、職員とのコミュニケーションでは、K様から話かけるなど社交的な場面も見られ、ゴルフの打ち方などを教えるなど面倒見の良い一面も見られています。食事の後には、他利用者様が食べていることは気にせず、すぐに席を立ち洗面所に歯磨きに行くなど、初めての環境でも自分のペースを守り周囲には動じず、意思も伝えられる性格も見られています。現在は、慣れない環境のため言動に抑制がかかっていると考えますが、今後、環境に慣れたとき自我が見られ”K様らしさ”に繋がっていくと考えます。デイサービスでは、意欲向上approach method(褒める、感謝の気持ちを伝える、好きなことだけをおこなうetc、失語症approach method閉ざされた質問の活用、馴染みの言葉をの活用、簡単な言葉の活用etcを中心に支援をすることで、デイサービスが「楽しい場所」、「安心できる場所」、「信頼できる場所」になれるよう進めていきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 初めての介護保険サービス導入の方で、マイペースでしっかり者の方であったこともあり利用初日は職員が少し緊張していました。ご家族にはとても厳しい一面がありましたが、職員にはとても優しく「ホッ」としました。

 「初めての利用で失語症状への対応、

            とても難しく常に学んでいます・・・」

 

№28 MENFISによる認知症が重度の方の支援方法「注意障害 編」 2021年6月26日(土)

 デイサービス利用時の様子ですが、1日の中で不安定になる事は見られていますが、利用開始当初と比較すると”不安定になる頻度”、”時間の長さ”、”混乱の程度”などは改善しています。

 O様が不安定になる原因は、環境因子(外部環境=物質的環境・人的ストレス、内部環境=身体的不調・心理的ストレス)の影響が強く、食事、レクリエーションなど場面が変わる環境やトイレや入浴など人が動く環境などは特に注意が必要です。環境の変化は必然的に起こることであり、環境の変化がないことは不可能に近いと考えます。

 そのような状況の支援のポイントとして、認知症状の一つである注意障害を活用することが大切と考えます。注意障害とは持続的注意、選択的注意、配分的注意、転換的注意などに分類することができます。各、注意障害を理解することで環境の変化に注意が向かいよう支援することが可能となります。

 食事の後など、人が移動するなど様々な環境が変化していきます。その際の注意障害の活用方法として、配分的注意障害を活用します。

 配分的注意障害とは、二つ以上のことを同時におこなうことができない障害であり、食後の食器を下膳することをお願いすると、食器を下膳することに集中し周囲の環境には気が向かないよう意図的に支援する方法です。注意障害は、認知症の方には多く見られる症状のため、様々な支援に活用することが可能であり、注意障害を理解することで様々な支援が自然とできるようになります。O様の支援は、様々な専門支援を活用することで安定した利用に繋がると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 私が認知症の方を支援する際、環境をしっかり理解したことで今までの困りごとが多く解決することができました。また、注意障害の理解が深まったとき、目の前が明るくなったように感じました。

「物事を正しく理解する、

     正しく見れるようになること、大切です!」

                                  今更ですが・・・

№27   レビー小体型認知症の方の利用初月のアセスメント視点「後編」2021年6月23日(水)

 心理面のアセスメントですが、身体の状態把握も含め、あん摩マッサージ師による施術を実施しています。S様は「靴下履くのがこうは(前傾姿勢)出来ないから座ってやってる・・・ズボンも脱ぐとき足で押さえて・・・」、「やっぱり歩かないとダメかしらね、歩いた方がいいのかな?・・・」など、様々な質問をする姿が多く見られています。質問が多いことは日常的に「なぜ?」と思う気持ちが強く表れていると考え、「なぜ?」が積み重なることで”不安”、”心配”、”恐怖”などの”こころの動き”が常に見られていると考えます。

 現在のS様の欲求階層は、安心・安全の欲求階層(物質的欲求)と考えており、不安があることでもう一つ上の欲求階層である社会的欲求階層(愛情・所属の欲求「デイサービス」=精神的欲求[に向かって進まないことが考えられます。しかし、”不安”や”心配”などを解消する場所が、社会的欲求階層にあたるデイサービスにすることで、通う理由付けが明確となり、S様のニーズである「なぜ?」の解消に繋がり、自然と欲求階層が自己実現に向かい上がっていくと考えています

 S様の支援で大切なことは、”こころの支援”であり、自己実現(自己選択・自己決定)ができる環境であると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 多くの方の支援を続けていく中で、介護士には多くの役割があると感じています。多くの方は介護=食事、排泄、入浴などを考えると思いますが、介護のほんの一面だと感じています。私たちの一番の役割は

    「こころを元気にすること!」

                               と学びました・・・

№26  レビー小体型認知症の方の利用初月のアセスメント視点「中編」2021年6月20日(日)

 記憶の種類のアセスメントですが、記憶には頭で覚えるエピソード記憶、意味記憶(陳述記憶)と身体で覚える手続き記憶(非陳述記憶)に分類することができます。

 S様の記憶の種類の特徴として、意味記憶、手続き記憶、エピソード記憶は十分に保たれていると考えます。しかし、認知症の方が比較的苦手なエピソード記憶(出来事の記憶)では、稀に話が違っているなど”思い込み”などによる話の変化は見られています。現在のS様の記憶のアセスメントは、記憶を保持する過程でエピソード記憶が曖昧になる程度と考えています。

※意味記憶とは、”一般的な常識”や”学校で学んだんこと”など「意味を理解する」ことの記憶であり、記憶の中でもとても古く、長く保持されている記憶と考えます。

※手続き記憶は、大脳基底核や小脳などから「身体が覚えている記憶」であり、意味記憶やエピソード記憶(大脳皮質)などとは記憶する場所が違っています。

 身体面のアセスメントですが、ADL(日常生活動作=歩行、食事、排泄etcIADL日常生活関連動作=食事の準備・片付け、洗濯たたみ、etcから日常生活でのパーキンソンニズム(病気や薬などによるパーキンソン症状=安静時振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害)を行動観察からアセスメントしています。

 S様の主な症状として、無動、姿勢反射障害が見られていますが、特に無動の症状が見られています。無動とは、動作がゆっくりになる動作緩慢などが症状となっています。姿勢反射障害とは、傾いた身体を自然に直すことができない、又は、傾ていることに気づいていないなどの症状となっています。S様は、日常生活全般に無動(動作緩慢)が見られ、長い距離など歩いた際、歩行姿勢が前傾になる姿勢反射障害が見られています。パーキンソンニズムの原因は、現状では不明ですがレビー小体型認知症DLB)などの疾患、薬物による影響など様々な原因が考えられます。デイサービスでは、パーキンソンニズムの変化から認知症状の変化、環境因子の変化、薬物療法の変化などのアセスメントを進めていきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 アセスメントの取り方を試行錯誤していた時期だったことを、今でも鮮明に覚えています。また、色々なことを調べていたと、読み直し改めて感じています。

 「知識はとても大切ですね!その後、助けられました。」

                                      つづく

№25  レビー小体型認知症の方の利用初月のアセスメント視点「全編」2021年6月17日(木)

 利用時の行動観察から認知機能のアセスメントを進めていますが、認知症の中核症状(主症状=記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語、実行機能障害)は軽度と考えています。現在、スクリーニングテスト(精神機能障害評価スケール=MENFISを利用開始当初から7日間実施しており、結果が出ましたご報告致します。

 S様の主な認知症状として、記憶障害(忘れてしまう事)であると考えますが、”勘違い”や”思い込み”によることが多いと考えアセスメントを進めていましたが、ご家族の話では日常生活で少し前に伝えたことを忘れることがやや増加していることを聞いています。デイサービス利用時に記憶障害は殆ど見られていないため、自宅以外の環境による心理的変化(気を張っているetc)が影響していると考えます。その他の認知症の主症状である、見当識障害(時間、場所、人物の見当がつかない事)、失認(見えているが物の認識ができない事)、失行(身体は動くが動作ができない事)、失語症(言葉の理解、発語、文字を読む、書く)、実行機能障害(物事を順序だてて進める事ができない事)は殆ど見られていないと考えます。

 ※記憶とは、”記名”、”保持”、”想起”の過程から成り立っており、様々なことを脳の中(海馬=新しい記憶「即時記憶、近日記憶」 大脳皮質=古い記憶「長期記憶」)に蓄積しています。また、記憶にはどれくれい覚えていれるか(記憶の保持=即時記憶、近日記憶、長期記憶)や記憶の種類(エピソード記憶、意味記憶、手続き記憶)などに分類する事もでき、様々な視点から評価する事が必要となります。

 S様の中核症状(認知症の主症状)は記憶障害が主に見られているとアセスメント(分析・評価)していますが、記憶の保持(即時記憶、近日記憶、長期記憶)はある程度されていると考えますが、海馬から大脳皮質に記憶を保持する過程で、必要のない記憶は消去されていると考えます。また、認知症を持つ方の記憶は逆行(記憶の逆行性喪失)する傾向があり、新しい記憶から喪失し、古い記憶が鮮明になることが多く見られています。S様の記憶は即時記憶が殆ど見られており、記憶の逆行性喪失から考察しても記憶の保持はある程度されていると考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

 初回の利用日は、わくわく感と緊張を常に感じております。しっかりしていることで、表面的には気づかない症状も多くあり、関わった時間の長さがとても大切と感じています。

 「記憶のアセスメント…難しく、複雑です!」

                           つづく

№24 現状の心理状況を理解するアセスメント視点        2021年6月14日(月)

 T様は利用開始から約5ヵ月経っていますが、行動観察法(MENFIS)によるアセスメントから考察すると元気な頃におこなっていた取り組みや趣味は、現状ではあまり良い効果に繋がらないと考えます。

 良い効果に繋がらない理由として、T様の”こころの欲求階層”と”人の欲求階層”が大きく影響していると考えます。人が障害などを受け入れる過程として、「ショック期 ⇒ 否認期 ⇒ 混乱期 ⇒ 努力期 ⇒ 受容期」などを経て、現在の自分自身を受け入れることが可能になると言われています。

 現在のT様の疾患(レビー小体型知症「DLB」)を受けれいる過程は、混乱期にあると考えています。混乱期とは、自分の置かれている状況や自身の状態を現実的に理解する時期であり、疾患(障害⇒認知症)の全貌を知り、自分自身の疾患は関知しないことを否定できなくなります。これにより「自分の価値は全て失われてしまった」と激しい喪失感を抱いている状況と考えています。

 その時の”こころの欲求”は自分自信を受け入れらえない状況であり、慈愛願望欲求と考え、「人から愛されたい」、「人から認められたい」、「評価されたい」、「受け入れられたい」などの欲求にあり、「自分で自分を認めたい」と感じる階層はその上の自己信頼欲求であるため、障害の受容過程に照らし合わせると混乱期であると考えます。

 人の欲求階層(マズローの欲求階層)では、物質的欲求階層である、安全・安心の欲求階層にあると考えています。T様は、疾患により健康な身体を喪失し、未来に不安を抱える状況であり、健康への不安、未来への不安など、安心できな心理的苦痛(内部環境因子)が働いていると考えます。デイサービスなどの社会資源は、欲求階層では一つ上の社会的欲求階層(愛情、所属の欲求=精神的欲求階層)であり、現在のT様の欲求階層には少し高い欲求と考えています。”こころの欲求階層”と”人の欲求階層”のアセスメントから、元気な頃の取り組みは「できなくなってしまった自分」を確認できてしまうため、あまり良い支援とはならないと考察立てています。

 現在の支援で大切なことは、”今のままで大丈夫”を、確認できる支援が大切であり、意欲向上approach method感謝の気持ちを伝える、常に尊敬の念を持ち接する、些細なことでも褒める、好きなことを好きなだけをおこなうetc)の徹底が有効であると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症の方と多く関わるなかで、大好きだったことを続けることが良いことであると勘違いをしていました・・・そうでない方も多くいること、気づいていなかったこと、考えずに支援していたこと反省です・・・

 「価値観の理解を深めること、とても大切です!

№23 情動が不安定になる方のアセスメントの視点「環境&欲求 編」2021年6月11日(金)

 状態の大きな変化は見られていませんが、情動の動揺は場面によって強く見られており、デイサービスでは入浴支援での強い拒否に派生し、入浴困難な日が1日見られています。

 職員が普段と変わらないアプローチで脱衣所まで移動していますが、「だから今日は入らないって言ってるでしょう!・・・・あんたもしつこいね」と、焦燥感に繋がり入浴を見送っています。O様の情動が不安定になる原因として、内部環境である身体的不調(排便による不快感etc)が大きいと考えていましたが、月○○日は排便もなく身体的不調による情動の動揺ではなかったと考察しています。

 0様の欲求階層(マズローの欲求階層=生理的欲求、安全・安心の欲求、愛情・所属の欲求、自尊心・尊敬の欲求、自己実現)は現在、非常に高くなっており一番上の自己実現に近いと考えています。O様の情動は自己実現が叶わない際、情動が不安定となり焦燥、易怒、暴言などの行動・心理症状に派生していると考えます。また、O様の性格が大きく関係していると考えますが、物質的欲求(生理的欲求、安全・安心の欲求)が満たされるとO様の欲求階層は自己実現まで上がる事が特徴の一つと考えています。

 デイサービスでは、物質的欲求階層を満たす支援を丁寧におこなうことが、”O様らしさ”(自己実現)に繋がり安定すると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 多くの方から沢山の学びを受けていますが、

  生理的欲求への支援は、本当に大切!

 身に染みて感じています・・・

№22 認知症の重度の方の支援の基本とアセスメント        2021年6月8日(火)

C様の支援のポイントとして、環境の変化を少なくすること、失語症があるため非言語のコミュニケーションの活用、慣れ親しんだ役割や手続き記憶を活用した取り組み、職員の役割の明確化(善い者、悪者)などがC様の安心に繋がると考えています。特に非言語でのコミュニケーションと手続き記憶を活用した支援が重要と考えています。

 非言語でのコミュニケーションの活用とは、C様は認知症の中核症状である失語症が顕著に見られています。失語症とは、”言葉の理解”、”言葉を話”、”字を書く”、”字を読む”への障害がある事であり、C様は失語症状は強く出ていると考えます。失語症のある方に言葉でのコミュニケーションは、勘違いや思い込みなどに繋がる事が多く不安にも繋がっていきます。失語症の方のコミュニケーションの基本は、簡単な言葉、短い言葉、普段使っている言葉、腹唱する、非言語(ジェスチャー、表情etc)などが大切になります。C様とのコミュニケーションは、失語症対応プログラムが有効になると考えています。

 手続き記憶の活用とは、認知症の方だけでなく全ての人は手続き記憶で多くの日常生活を送っていると考えます。手続き記憶とは、習慣や慣れ親しんだ動作の事であり、身体が覚えている記憶と言われています。女性であれば、家事(洗濯、掃除、食事作り、裁縫etc)、男性であれば力仕事(庭の手入れ、お風呂掃除、車の運転etc)など、人それぞれではありますが手続き記憶はバックブランド(背景=生活歴、職歴、家族構成etc)と密接な関係があります。

 C様は、元気な頃から家の仕事をすべておこなっており、家事援助は一番の手続き記憶の活用になると考えます。慣れ親しんだ動作は、考えることなく身体が動くので不安だけでなく混乱することも軽減されます。失語症approach methodと手続き記憶approach methodの活用が、C様の状態の安定に大きく影響すると考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症の症状が重度の方(行動観察法=MENFIS評価)の支援で、とても大切なことだと日々感じています。私たちは言葉でのコミュニケーションが多く、私たちの価値観での関りが多くなっています。

 私たちは忘れてしまうことへの体験が殆どなく、

   忘れてしまうことへの理解が余りできていないと感じています・・・」

№21 とても元気な方への入浴支援のアセスメント視点       2021年6月5日(土)

 入浴支援のアセスメントの経過観察ですが、先月の報告書で入浴支援の大切なポイントである、”言葉かけ”、”関わり方”、”タイミング”などのアセスメントを進めていますが、入浴での言葉かけで大切な事は、B様は面倒見が良く優しい性格であるため、「喜ぶと思って、お風呂の準備をしてしまった」や「娘さんが洋服を準備してくれて・・・優しいですね」など、優しい性格を理解し”しょうがない”と思わせる掛けが有効であると考えます。

 B様との関わり方として、B様は明るく、元気で、テンポよくコミュニケーションを取るため、職員もB様のテンポや声の大きさ、気分の高揚度を同じレベルでコミュニケーションを図り、気分を高揚する環境がポイントであると考えます。

 私たちも嫌な事をお願いされた際、気分が良い時は取り組むことが出来ると考えます。B様も”お風呂は面倒”と考えており、少しでも気分が高揚し、良い状態であることが”面倒なお風呂”の拒否の軽減に繋がると考えます。入浴のタイミングは、午前の疲労感や眠気など内部環境(身体的不調=眠気、疲労感 心理的不調=面倒、不安 etc)の影響を受けない時間帯が拒否の軽減になると考えます。午後になると食後の眠気や午前からの疲労感、デイサービスで半日過ごした慣れなどから拒否のリスクは高くなると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 とても頑固な性格もあり「入浴は自宅」との思いが強い方でした。意思が強い方がどうしたらお風呂に入って頂けるのかを日々真剣に考えていました。今ではほぼ入浴支援が可能となっていますが・・・

 「お風呂は、本当に難しい支援です・・・」

 

№20 情動が不安定にある方のコミュニケーションのアセスメント  2021年6月2日(水)

 排泄支援の様子ですが、尿失禁は以前から顕著に見られていましたが、3月は多量の尿失禁とパンツ内の吸収剤が破れて出ている状態も見られています。紙パンツの状態から1日以上交換していなかったと考えます。デイサービスでもトイレ誘導を進めていますが、その日の情動(一瞬の感情の動き)の動きによって誘導ができない日も見られています。

 S様の支援のポイントとして、情動の安定・コントロールをすることが大切と考えています。S様は、気分が高揚すると大きな声や床踏み鳴らす、奇声を上げる、手や机をたたくなどの行動に派生し、その言動を見ていた他利用者様との関係性が悪くなってしまいます。

 情動のコントロールは会話の内容と大きく関係すると考え、”楽しい話”、”好きな話題”、”タッチング”などは気分が高揚しすぎるため、回想療法を活用した内容が有効と考えています、”子供の頃の話”、”両親の話”、”故郷の話”、”苦労の話”などを気分が高揚する前に話すことで、「懐かしさ」や「しみじみ感」などの感情が強くなり情動の安定・コントロールにも繋がると考えています。こころが穏やかになることで、奇声や大声、手や机をたたくなどの言動は減少するとともに、安定した情動によってトイレへの強い拒否などの軽減にも繋がると考えアセスメントを進めていきます。

「鳥さんからの一言」・・・

 とても個性的な方であり、初めて利用したころは誰も近くに寄れない程、刺々しかったことが忘れられません。利用が長く、今では奇声を上げることや、職員に変な顔をするなど、信頼関係が気づくことができました。しかし、長く利用していることで「その人らしさ」はより強くなり、環境によって難しいことも増えています。

 「元気になってほしい・・・でも元気になりすぎると・・・

                          色々考え日々頑張っています・・・・・・」

№19 認知症の方に多く見られる高齢者の心理へのアプローチ   2021年5月30日(日)

 A様は、気づかい、協調性、社交性、積極性などコミュニケーション能力が高いだけでなく、残存機能(残されている能力、又は、残されていると思われる能力)も十分に残されていると考えます。

 元気な頃のA様は、几帳面で責任感も強く、我慢強く、何でも器用にできていたと考えます。しかし、認知症となり記憶障害(物忘れ)や実行機能障害(順序立てて物事を進める能力)などの主症状が強くなり、今までできていた事が手際よくできなくなったことで自信を喪失し、自発性も低下し自宅での役割をしなくなったと考えます。A様「もう80過ぎててね、もう最近はほんと何もわからなくて、これじゃ、馬鹿と一緒なのよ・・・馬鹿なの!ほんと嫌になるわよね・・・」など、自分自身を否定する発言が多く、”情けない”、”どうなるのか不安”、”生きていても仕方がない”などの心理状況が強くなっていると考えます。

 デイサービスでは、”心の支援”として、意欲の向上プログラム(褒める、感謝の気持ちを伝える、尊敬の念を持ち接する、好きな事を好きなだけおこなうetc)を丁寧に進める事で”こころが元気”になり行動の変化に繋がると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症の方だけではないですが、高齢になると様々な喪失体験(健康な身体の喪失、配偶者など大切な人の喪失 etc)により意欲が低下し、こころも元気がなくなっていきます。

    「私たちの一番の役割は、こころを元気にすること」

こころが元気になった方は、自然と身体も元気になっていきます・・・

№18 一人暮らしの方の服薬支援のアセスメント         2021年5月27日(木)

 自宅に「薬がない」との事で●●病院までタクシーで出かけています。娘様から電話があり状況を確認していますが、現在の自宅の環境がS様に合っていないと考え修正を図ってます。

 環境の修正として、S様は「いまは、薬を飲んでいない」との発言も多い事から、”薬のセット入れ”を常に目に入る場所(テレビの横)に移動し、薬がある事で不安を軽減すると共に、現在も薬を服用している意識付けへのアプローチも含め場所を変更しています。

 また、「お薬は、ほうとくで預かっています。心配なときは電話をください0465-44-4712●●病院)」と書いた紙をお薬入れの横(電話の後ろ)と冷蔵庫に貼っています。貼り紙の内容も少し修正し、以前は職員の名前を書いていましたが効果が少ないと考え、信頼関係のある”●●病院”と変更する事で不安になった際、電話をかけて確認すると考え変更しています。

 大切な事は、認知症の方は不安になると認知機能が一時的に低下します。不安にならない事が重要であり、不安になったときの問題解決方法を分かりやすくすることもポイントになります。

 薬のセット場所を変更してから、職員が毎日訪問をする事で服薬方法のアセスメントも進めていますが、服薬している日の方が少なく職員が訪問して服用する事の方が多くなっています。訪問時の支援として、薬への意識付けを高めるため、毎回同じ声かけと行動をする事で記憶に刷り込む作業も進めています。認知症の方も同じことを繰り返すと新しい事も覚えられるため、毎日の訪問する事で発言の変化、行動の変化に繋がると考えています。

 環境の修正の大切なポイントは、S様が一人で生活している環境に合わせる事が重要であり、一人で生活している行動パターンのアセスメントが不安の軽減、認知症状の安定、ご家族の心配の軽減に繋がると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 一人暮らしの方でお元気なため、何かあると自分自身で問題解決ができるため、ご家族の心配が多く見られた方でした。その方は、燃えるゴミを出す日がわからず、今までの経験からゴミ置き場を確認して燃えるゴミの日を把握していました。認知症の方が分からない時に”知恵”と”経験”によってできることは多くあると感じました。

「その方の生活歴、生活習慣、性格の視点は大切と学びました」

№17 レビー小体型認知症の方の入浴支援のアセスメント事例   2021年5月24日(月)

 入浴支援の様子ですが、利用開始当初は慣れない不安などから拒否が続き、ご家族の話からも「沢山の人が入っているお風呂は・・・」との発言が聞かれ、清潔感など物理的環境因子も影響しているアセスメントが取れています。しかし、職員との信頼関係が徐々に構築されたことで、2月は3回ほど入浴支援が実施できています。

 入浴支援のアセスメントですが、排泄支援同様、A様のペースで支援する事が認知機能の維持となり、日々の習慣や行動の癖などを理解する事が手続き記憶(身体が覚えている記憶)大切なポイントと考えます。

 具体的な観察ポイントとして、脱衣時の手順(上肢⇒ズボン⇒靴下⇒上肢肌着⇒下肢肌着⇒パンツ など)、洗い場への移動手順(手すりを掴まり立つ⇒右手でドアに手をかける⇒左足から洗い場に入る⇒左手で椅子のアームレストに手をかけ座る など)、洗い場での洗う手順(シャンプーを右手に出す⇒頭を洗う⇒シャワーで流す⇒タオルで拭く⇒泡立てたタオルを右手に渡す⇒左腕から洗う・・・・・など)、湯船に入る手順(左手で手すりを掴み⇒右足を上げ⇒左足を入れ⇒右手で横手すりを掴み⇒体の向きを変え沈む など)など全ての行動の流れを把握する事が、スムーズな動作から自立支援に繋がります。とても些細なアセスメントと考えますが、認知症の方の支援は小さなことを丁寧に進める事が、認知症状の変化を少なくし、残された能力(残存機能)の維持・向上にも繋がると考えています。A様の支援で大切な事は、平常心をどのように維持できるかがとても重要と考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 レビー小体型認知症の方でしたが、利用日によって認知機能の様子が変化し、安定した支援が難しく日々悩み、考えていたことを思い出します。

 認知機能の安定に大切な要素はなにか?を常に考え支援をしていました。体験し考えた末、気づいたことは、私たちと一緒なんだと改めて肌で感じました・・・

№16 記憶の逆行性喪失から妄想に派生した事例         2021年5月21日(金)

 以前から記憶障害による作話、妄想などは見られていましたが、2月に入り妄想に派生する頻度は増加し、状況によっては焦燥、易怒などの行動・心理症状まで派生することも見られるようになっています。 

 原因を考察すると、記憶の逆行性喪失の変化が見られていると考えます。記憶の逆行性喪失とは、新しい記憶は消失し、古い記憶が鮮明になる症状を表しています。M様の妄想内容には、仕事の内容が多く聞かれ、M様が輝いていた時代、現在のプリンターの原型となる機器を開発した時期の話が多く聞かれています。M様は、場所の見当識障害(場所の見当がつかない事)からデイサービスが会社にすり替わり、ほうとくの職員は会社の社員、他利用者様も会社関係の人間となり、様々な妄想に派生しています。

 妄想への対応として、導入は妄想への説明・説得は禁物で受容・傾聴対応が基本となります。妄想に派生している際、対象者は心理的変化として不安や心配、恐怖などの心理的苦痛が見られている事が考えられます。

 妄想は、その方にとって事実であり現実の事なので説得・説明をする事が、不安や心配などの心理的苦痛の軽減には繋がりません。話をよく聞き、受容・傾聴対応を続ける事で、不安を軽減しこころが平常心に戻ります。こころが平常心に戻った際、認知機能は回復します。認知機能が回復した際、対象者の世界観に入り、小さなキーワードから現実の世界に戻る作業(失語症approach methodのケースワーク)をおこなうことで妄想は消失し普段の状態に戻ると考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

 社会的地位が高くとても頑固な方であり、妄想になった際、ヒヤヒヤした気持ちになったことを思い出します・・・

 妄想は対応が難しい行動・心理症状の一つと感じていますが、妄想を正しく理解し、記憶障害のことを学んだことで、対応のヒントが多く見つけられました。

          「でも、妄想は難しい・・・」

№15 年末年始のデイサービスお休みによる認知機能の変化    2021年5月18日(火)

 生活リズムの変化の影響として、認知症の方は新しい事や普段と違う事がおこると不安や焦り、心配(内部環境因子=心理的苦痛「不安、焦り、心配、恐怖etc)などから認知機能が一時的に低下する傾向があります。

 生活リズムの変化は、日々の習慣であるデイサービスがお休みになる事で、自宅でやる事もなく寝る時間が増加する事で、生活リズムが乱れ認知症状にも影響します。寝て起きると今の時間が分からない事や、朝の〇時なのか夜の〇時なのか分からなくなる失見当(見当識障害=時間や昼夜の見当がつかなくなる事)を起こしやすくなります。

 特にH様の自宅は、一人暮らしのため雨戸が常に締め切りであり日差しが入らず、室内から外の情報が確認できない事も失見当を起こしやすい環境となっています。失見当を起こすと不安、心配、焦り、恐怖などの心理的苦痛も少なからず感じるため、心理的苦痛の影響から認知機能は一時的に低下します。

「鳥さんからの一言」・・・

 私たちのデイサービスは、年末年始の5日間のお休みがあり、ご利用者様にとって1年で一番長い休みとなります。

 私たちにとって5日間は短い時間に感じますが、ご利用者様にとってはその5日間でも大きな影響に繋がります。

 私たちが思う以上にご利用者様は環境の影響を受けてしまうことに気づきました・・・

№14 ご自宅のお風呂への欲求が強い方へのアプローチ方法「後編」   2021年5月15日(土)

 入浴支援方法の修正により玄関を入るまでは”お風呂に入った事”を覚えていましたが、自宅内に入ると入浴の記憶がリセットされお風呂の訴えが聞かれています。修正した支援方法により自宅の玄関までは入浴の記憶を保持できるようになっていますが、玄関に入ると記憶がリセットされてしまうため、ご家族の負担も考え支援方法の微調整が必要と考えています。

 入浴の記憶が消失する原因として、認知症の中核症状である記憶障害が大きく影響していますが、K様の背景(バックグランド=生活歴、家族構成、職業etc)も大きく影響していると考えます。自宅のお風呂はマキを使った自慢のお風呂であり、自宅の浴室(湯船、窓、壁、洗い場etc)がお風呂に入っている実感を一番感じる瞬間であると考えています。その習慣を数十年繰り返した記憶は、脳裏に鮮明に残っていると考えます。K様の「お風呂に入った」は、長年、肌で感じてきた自宅のお風呂の感覚であり、デイサービスでのお風呂とは大きな満足感の差が生まれています。入浴の記憶がリセットされる真因は、K様の”思い”と”慣れ親しんだ感覚”であると考えています。デイサービスでは、現在の支援方法にヒノキチップを湯船に浮かべ、記憶に残る入浴支援を継続する事で、徐々に訴えが消失できればと考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 様々な取り組みを進めていましたが、最後まで訴えの消失には繋がらず解決できなかった方です・・・

試行錯誤した時間はとても大切時間であり、深い学びに繋がりました。

 「忘れてしまうことをどのように伝えるか・・・難しいですね・・・」

№13 ご自宅のお風呂への欲求が強い方へのアプローチ方法「前編」   2021年5月12日(水)

 デイサービスで入浴支援を実施していますが、自宅に帰り「お風呂に入っていない」との発言が繰り返され、ご家族の精神的負担が増加しています。デイサービスの支援方法をメラビアンの法則から修正を図っています。

 メラビアンの法則とは、人間は様々な情報を処理する際、3つの条件があると言われています。3つの条件の中で、1番影響力がある情報が視覚からの情報と言われ、視覚(身だしなみ、態度、表情etc)からの影響力が55%と言われています。2番目に影響力のある聴覚(言葉使い、話し方etc)からの影響力が38%と言われ、上記2つの感覚器の影響だけで9割以上の情報による影響を受けてる事を表しています。最後にその他の条件として、話の内容や情報などによる影響が7%と言われています。

 メラビアンの法則から、視覚へのアプローチとして赤い洗髪ブラシを活用し、洗髪時に繰り返し丁寧な言葉使いで説明しています。また、視覚を活用した情報を忘れないよう(記憶障害)繰り返しブラシの話、シャンプーの香りの話などするよう支援を修正しています。支援を修正した事で、忘れる頻度は急激に減少しており、メラビアンの法則による支援方法は有効であると考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

 物事をはっきり伝え、曲がったことが大嫌いな性格の方であり、支援の中でお叱りを受けたことが多い方でした。しかし、とても優しく姉御肌の部分も多く、様々な方から慕われる性格であったことも鮮明に覚えています。 

 忘れてしまう方にどのように伝えるかを学ばせて頂きました!

「本当に良くお叱りを受けました・・・」

№12 重度の認知症の方の安心できる環境へのアプローチ      2021年5月9日(日)

 デイサービス利用時の様子ですが、K様は環境の変化(食事、レクリエーション、排泄etc)が見られると、現状の理解力の低下などから、目の前の事が理解できず不安となり、情動が不安定になり落ち着きが無くなっていきます。

 原因は、認知機能の低下による理解力の低下と考えますが、認知機能の改善は器質的(細胞的)に難しいため、環境因子を使うことで認知機能を維持し情動の安定を図っています。私たちは、目の前の事を説明し理解させることで安心に繋げようとしますが、認知機能の低下が見られるK様には少し難しいと考えます。

 認知症が重度の方への支援のポイントの一つとして、環境を身体で理解する支援が大切であり、食事の環境になる際は、食事の準備(机拭き、お茶の準備etc)などから食事の時間である事を、身体から伝えていきます。レクリエーションの際も準備(机拭き、物品の準備etc)をする事で何かをする事を身体で理解できます。

 認知症の方は、物忘れ(記憶障害)から日常生活の問題に繋がっていことが多いと考えています。忘れてしまう事を治すことは難しいのですが、忘れずらい記憶もあります。それが手続き記憶(身体が覚えている記憶)であり、全ての認知症の方の支援でポイントになると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症が重度な方への伝え方に日々悩み、記憶障害への理解をもう一度見直したことで大切な手続き記憶の活用方法に気が付くことができました。

 手続き記憶は、最後まで残される記憶であることを臨床から知り、認知症の方から多くのことを学んでいると日々感じています。

 「気づくこと」大切ですね!

№11 利用開始当初のコミュニケーション方法のポイント「DLB 編 」 2021年5月6日(木)

 早期の信頼関係の構築の基礎であるコミュニケーションのポイントとして、心理的苦痛を軽減できることが重要と考えています。

 心理的苦痛とは、”焦り”、”不安”、心配”、”恐怖”など様々なこころの動きを示していますが、心理的苦痛がある事で認知症の中核症状(主症状=記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語症、実行機能障害)である失語症への影響も大きいと考えています。

 失語症とは、言葉の理解、言葉の発生、文字を読む、文字を書く事に分類されますが、M様は心理的苦痛の影響を受けると、語想起の低下(言葉を思い出す事の低下)や吃音(言葉がスムーズに出ない事)、発声が弱くなる(自信の喪失)など言葉の発声への影響が大きいと考えています。コミュニケーションの際、焦りや不安を軽減するためM様が話す文章の語尾を復唱する事を徹底しています。コミュニケーションの基本である受容・傾聴の技法の一つであり、復唱されることで話している本人は、”話の内容を理解している”、”分かってもらえた”など心理的な安心に繋がります。

 もう一つの技法として、M様の話すスピードと同じ速さで話す事も徹底しています。コミュニケーションは不思議なもので、認知症の方に見られる作話(作り話)などが、本当の話で合ったかのような錯覚を受ける事が多々見られます。注意深く分析してみると、私たちと同じ会話のスピード、言葉の返答をしているため、聞き手は違和感がないため本当の話のように聞こえていると考えます。コミュニケーションは信頼関係を構築するためにとても大切な手段のひとつであり、M様の癖や習慣を理解する事が重要と考えています。

 以前、ご利用していたご利用者様のエピソードですが、その方は能登の生まれの方で75歳まで能登で生活していました。認知症となり76歳で娘様の居る神奈川県に引っ越してきています。私たちは慣れ親しんだ言葉は不安を軽減する効果があると考え、職員全員が能登弁を覚え話をしたことで信頼関係が構築され支援の変化に繋がっています。M様も九州の生まれであり、時には方言、時には英語(バックグランドより仕事で英語を使用していた)などを使用する事が安心感に繋がると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 失語症状は認知症の方の多く見られる症状の一つと考えます。私たちは、言葉でコミュニケーションを取り、人との関係性を構築していきます。とても大切なことと理解はしていましたが、失語症の方と接した際、改めて自分本位のコミュニケーションを取っていたと感じました・・・

慣れ親しんだ言葉や方言、記憶の逆行性喪失を考えたとき、とても大切な視点と感じました。

№10 家族のなぜ???を解説「梯子からの転落事故 編」      2021年5月2日(日)

 

 

    

 

 

                              

 

 

 

 

 

 

 

  

2度の転落事故の原因は、認知症による病態失認(病気の認識がないこと)が原因と考えています。

 認知症の方は、病識がないことが多くご家族の説明でも理解ができません。病識がないことは「自分は元気」との認識から梯子に登って剪定をするなど、ご家族からは理解ができない行動を取ることに繋がっています。

 病識がないことは、忘れてしまうこと(記憶障害)が大きく影響し、”転んだこと”、”怪我をしたこと”なども病気(認知症)から忘れてしまうのです。

 また、天気が良く、庭の植木が伸びていたこと(環境因子=物質的環境)が「植木を切らないと」などの欲求のトリガー(引きがね)になっていたことも原因の一つと考えます。

 ご家族は、「また・・・急になぜ???」と困惑した様子であり、対応のポイントを説明しています。ご自宅の安全な環境(剪定なら⇒梯子を片付ける、又は、剪定ハサミもしまうetcを整えることが大切であり、説明をしても記憶障害により忘れてしまうのが、認知症を患う方の特徴なのです。

「鳥さんからの一言」・・・

ご家族からは、「認知症の方の行動が理解できない」との話を多く聞きます。

 その際、私が良く説明することは、「私たちは、忘れるということに対し、体験を通して理解しづらい・・・」と、お話しています。

 ”頭が痛い”や”お腹が痛い”など、私たちも体験から理解はしやすいと考えます。しかし、記憶障害から体験自体を忘れる”ことは、私たちは余り体験できないため、認知症の”忘れてしまう(記憶障害)”への理解がしづらいことが「認知症の方の行動のなぜ???」に繋がっていると説明しています。

 「私たちも難しいことが多いですが・・・」

№9  中核症状、環境因子から派生する行動・心理症状のアセスメント  2021年4月29日(木)

主治医の病院を受診していますが、薬の変更もなく経過観察を進めていきます。

 デイサービス利用時の様子ですが、認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語、実行機能障害)と環境因子(外部環境・内部環境)から焦燥、大声、易怒、帰宅願望、徘徊などの行動・心理症状は顕著に見られています。行動・心理症状の動揺ですが、午前は眠気が強く比較的、失見当(時間や場所の見当がつかなくなることetc)からの混乱による行動・心理症状は軽減されています。

 眠気は、内部環境因子の身体的不調であり、寝ている時間が長いことで環境の影響を受けず、認知機能を活用する場面もないことから行動・心理症状が軽減されていると考えます。眠気の原因の考察として、睡眠導入剤(ゾピクロン錠)や向精神薬(リスペリドン錠)が強く影響していると考えますが、以前から日中の眠気は顕著に見られていたことから夜間の睡眠障害の影響も考えられます。

 午後からの行動・心理症状の動揺ですが、午後になると昼食も摂取し眠気が軽減されたことで覚醒時間の増加、活動量の増加から行動・心理症状は増加傾向となります。特に13時半以降から混乱⇒焦燥⇒易怒⇒暴言などに派生することが多く、眠気が解消され薬の半減期も重なり内部環境因子の身体的不調が解消されたことで活動量が増していると考えます。

 対応の基本は、不安にならない環境を整えることであり、失見当の時間をできる限り少なくする支援がポイントになります。寝起きの状態、周囲をキョロキョロしている状態、不明瞭な発言が聞かれる状態、急に立って移動を始めた状態など様々な失見当のサインを見逃さず、RO(リアリティ・オリエンテーション=現実見当識訓練)を徹底することで状態は安定すると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

 とてもユーモアがあり、周囲の人を嫌味なく楽しくしてくださる方でしたが、認知症状の変化から様々な言動の変化に派生し、医療機関と連携を密に取った方でした。

 行動・心理症状の派生は、環境因子、中核症状、薬物療法などの影響から複雑であり、自宅での状況なども含め、一つ一つ丁寧にアセスメントをしたことを思い出します・・・

№8 排泄支援のアセスメント事例「失禁の種類 編」        2021年4月26日(月)

 排泄機能の様子ですが、7月はデイサービスでズボンを汚すほどの失禁は見られていません。失禁の種類のアセスメントを進めていますが、先月も失禁は見られていないことから機能性尿失禁の影響が強いと考えます。

 溢流性尿失禁は、常に尿が少量流れる症状であり、6月、7月共に失禁が見られないことは溢流性尿失禁が原因であることは考えずらいです。

 腹圧性尿失禁は、何かの拍子に腹圧がかかり尿が出てしまう症状であり、今までの失禁の環境からアセスメントをすると腹圧性尿失禁が原因であることは考えずらいです。

 切迫性尿失禁は、急激な尿意からトイレに間に合わずズボンを汚してまう症状であり、デイサービスでの水分摂取量(平均1000㏄)から6月、7月の利用中に1度も見られていないことは考えずらいです。

 機能性尿失禁は、認知症など病気の影響から失禁してしまう症状であり、Y様の失禁の原因として一番考えられアセスメントを進めています。

 現状の考察として、認知機能の注意障害から尿に気づくのが遅くなり、結果としてトイレに間に合わないと考えています。生理現象の尿意と転換的注意(本来注意を向けなければいけないことに注意が向かないこと=運転中に会話内夢中になり、運転がおろそかになるetcが重なる環境で失禁が派生していると考えます。夜間も尿意より眠気が強くなりトイレの失敗が増加することは、認知機能の注意障害の影響が考えらえます。

「鳥さんからの一言」・・・

 認知症の方は、夜間の失禁から始まる傾向が強く、その際、失禁の種類からアセスメントを進めることで対応のポイントに気が付くことが多くあります。

「失禁の種類の理解はとても大切と感じています。」

 

№7 食事支援のアセスメント事例「注意障害 編」         2021年4月23日(金)

 食事支援の様子ですが、以前から主食は全量摂取することが多く見られていましたが、副食の摂取量が少なく原因のアセスメントを進めていましたが、認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害、失認、失行、失語症、実行機能障害)とその中に含まれる注意障害(持続的注意、配分的注意、選択的注意、転換的注意)、環境因子(外部環境・内部環境)の影響による食事量の変動が真因と考えています。

 特に注意障害により、食べている食事以外に注意を向けることが苦手であり(選択的注意)、その結果、一品を集中して食べていると考えます。また、副食は主食と違い、様々なものが混ざり、加工されており何であるかの認識がしづらいとも考えます。(失認)主食のご飯は白く、加工されることも少ないため、食事の中で一番認識されやすい、又は、一番見慣れていることから安定した食事摂取量になっていると考えています。

 デイサービスでは、食事支援の中に注意障害approach method、手続き記憶approach method、、意欲向上approach methodを徹底していることで食事量の安定、水分量の安定に繋がっていると考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

食事の場面は、認知機能をフル活用する環境であり、注意障害や中核症状のアセスメントを学べる環境であると日々感じています。認知症の方の食事の場面、学べますね~!

№6 排泄機能のアセスメントの事例               2021年4月20日(火)

 以前より尿機能の変化が少し見られていると考えます。排尿機能の変化として、尿を膀胱に維持できる時間が以前より短くなっていることが考えられます。ご家族の話から、帰宅後にトイレに急いでいくことが見られているようです。デイサービスでは、以前と変わらない排泄間隔での支援をしており、自宅での行動の変化は排尿機能の変化が原因と考えています。

 6月には、ご家族の工夫により履いているパンツを1枚にすることで、ズボンを下ろす時間が少しでも短くなることで排泄の失敗を少なくするようにしています。6月時点のアセスメントでは、認知症の中核症状の失行(身体は元気ですが、モノが使えない、又は、動作ができないこと)が原因で排泄の失敗に繋がっていたと考えていました。しかし、7月の行動観察や状況などから考察すると、尿を我慢できる時間が短くなった、又は、急激な尿意(切迫性尿失禁)、認知機能である注意障害の影響から尿意に気が付くことが遅くなる(機能性尿失禁)が原因であったと考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

排泄機能のアセスメントは、原因(機能性尿失禁、切迫性尿失禁etc)を究明するアセスメントが尿失禁などの改善に繋がることを学びました。日頃から排泄機能のアセスメントは、難しいと感じている私がいます・・・

№5 退院後、新規利用者様のアセスメント②「排泄・口腔動作編」 2021年4月17日(土)

 排泄機能の様子ですが、Y様の排泄環境は紙おむつ+パットを使用しています。利用初日の排泄機能から考察すると、Y様は疾患(統合失調症、認知症)などから尿意が鈍くなっていることや尿意を伝えることが難しくなっていると考えています。利用時のアセスメントから失禁(尿や便をトイレ以外の場所でしてしまうこと)の種類は、機能性尿失禁(疾患などが原因となり失禁してしまうこと)と考えています。Y様は排尿の際、尿が出る感覚は残っており「・・いい・・でた・・でた・・」との発言が聞かれており、失語症などからも周囲に尿意を伝えることが難しいと考えています。排泄のタイミングは、定時のトイレ誘導からアセスメントを進め失禁の軽減を図ると共に、排泄パターンを把握することでトイレ誘導のタイミングを決定していきたいと考えています。また、トイレでの排泄回数が増加し、失禁が減少することで排泄機能の改善(濃縮機能、尿意etcに繋がればとも考えています。排泄機能の改善は、ご家族の介護負担の軽減にも繋がると考えています。

 口腔ケアですが、職員が声をかけY様の歯ブラシを差し出しますが、手に取る様子もなくジッと見ています。歯ブラシの認知をしていないと考え、職員が手で磨く真似をしても歯ブラシを持つ動作は見られないため、Y様の歯ブラシで磨く真似をしてから手に持ってもらうと23回磨く動作は見られています。磨き残しは職員が介助をしていますが、嗽の水は吐き出さず飲み込んでしまい顔を顰めています。もう1度嗽を勧めてみますが嗽はできず口腔ケアを終了しています。Y様の支援では、伝え方の工夫と手続き記憶の活用をすることが、自然な流れで残存機能(残されている能力、残されていると思われる能力)が活用できると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

「手続き記憶のスイッチ」が重要なキーワードであったご利用者様であり、残存機能を活用するための基礎であることも気が付きました・・・

№4 退院後、新規利用者様のアセスメント①「移動・食事動作編」 2021年4月14日(水)

 移動支援の様子ですが、車椅子への移動や送迎車に乗車する際など、職員の声かけへの理解は見られ立位をとることも良好であり、数歩足を動かす姿も見られています。車椅子のフットレストに足を乗せる動作では、職員の声掛けに足を上げる姿は見らていません。しかし、車椅子から立つ際、自ら足を高く上げる姿は見られており、機能的には可能と考え声掛けの工夫が必要と考えています。また、非言語のコミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)である、手続き記憶(身体が覚えている記憶)を活用することも重要と考え、”立つ動作”、”歩く動作”、”足を上げる動作”など各動作の手続き記憶のスイッチを探すこともADLの維持・向上のポイントになると考えています。

 

 食事支援の様子ですが、職員が箸を手渡すと自ら食事に手を伸ばし、失認(目は悪くないですが、見えている物が認識できないこと=食事を認識していないこと)、失行(身体は元気ですが、物の使い方や動作が上手くできないこと=食べ方が分からず動作もできないこと)も見られず食事を摂取しています。

 食事開始から30分程すると箸が止まることが多くなり、「これ食べて」など簡単な言葉で食事を進めています。(失語症approach method箸が動かない時には、食事の認知がしやすいよう介助も交えて食事を進めています(味覚・触覚による刺激)。時々、向かいに座る職員の食事に手を伸ばす行動は見られていますが、職員がY様の食事を指さすと自分の食事を摂取しています。繰り返し職員の食事に手を伸ばす行動が見られるため、食事が認知しずらいと考え、食器の置き場所を少し遠めにしてみると職員の食事に手を伸ばすことはなくなり、食事を上手に摘まむことも多く見られています。

 視野の狭窄(見える場所が狭くなっていること)などの関係、または、認知機能(認知症の中核症状や判断力、理解力など)の関係であるかは不明ですが、先行期の障害(嚥下5=先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)は見られていると考え、食事環境の修正は必要と考えています。むせ込みなどは見られていないことから嚥下機能は良好と考えますが、咀嚼は上顎と舌ですり潰すような動きが多く見られ、咀嚼回数も平均10回前後となっています。食事のペースが速いことも見られ喉に詰まらせることにも注意が必要と考え、食事のペースを調整することや見守りの環境を整えることが安全・安心な食事環境に繋がると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

年齢は若いですが、失語症状も強く意思の疎通が難しく、初めての利用であったこともありADL(日常生活動作=移動、食事、排せつ、入浴)のアセスメントの学びが深まった方・・・様々な方から多くのことを学びましたが、Yさんはその中の一人でした。

№3 排泄機能のアセスメント・・・               2021年4月11日(日)

 排泄機能の様子ですが、6月は利用回数が1回少ないですが、尿失禁(尿でズボンを汚すこと)は見られていません。

 現在、排泄機能のアセスメントを進めていますが、尿失禁の原因となる種類(溢流性尿失禁、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、機能性尿失禁)のアセスメントを進めることで、対応の修正などから尿失禁を消失、又は、軽減することができると考えています。

 自宅では、布団を汚すほどの失禁はないと聞いており、眠気から尿意に気づくことが遅れていることは考えられます。デイサービスでのアセスメントでは、他利用者様やレクリエーションなど何かに集中している環境で見られています。”何かに集中していること”がキーワードと考え、興味・関心の高いものがあると尿意に注意が向かいことが考察できます。大切なことに注意が向かないことは、注意障害の転換的注意(本来注意を向けなければいけない方に注意が向かないこと=車の運転をしている際、運転に注意を向けなければいけないのに、会話に注意が向いてい運転がおろそかになること)であり、注意障害は認知症の中核症状に大きく影響しています。

 現在のアセスメントから、C様の尿失禁は認知症の影響が強いと考え、機能性尿失禁の可能性が高いと考えます。デイサービスでの失禁の軽減は、さりげない声かけによるトイレの意識付けが大切と考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

排泄機能は、ご家族への負担が多くなり、在宅介護の大きな課題と認識しています。少しでも排泄機能の維持・改善に繋がるよう、自宅の状況などを確認し取り組んでいる状況です・・・

 

№2 低血圧、睡眠障害からのアセスメント・・・          2021年4月8日(木)

 先月の報告書でもお伝えしていますが、B様の低血圧は睡眠障害(眠気)との関係性が高いと考えています。7月は平均血圧値が100/53mmHgと安定していますが、以前の状態がやや低下している時の平均血圧値が91/49mmHgと低くなっています。7月の利用時も血圧が低い日が見られていますが、ご家族からも「今日は寒いからかなかなか起きなかったのよ」77日)と眠気が強く見られている話を聞いています。

77

 1017分 BP86/50mmHg P52

 1055分 BP88/59mmHg P48

      BP92/61mmHg P49回(触診P51回)

 1240分 BP103/47mmHg P55

       BP109/48mmHg P57

 ご家族の話からも眠気が強い日には血圧が低くなり、食事量も副食が5割程度、水分量も400㏄と普段より少なくなっています。※普段 副食=9割 水分量=700㏄)午後からは眠気が解消されたことで血圧が上がり、レクリエーションでは他利用者様と一緒に「そこ擦ってあげたいよ~~。擦ってあげるよ・・・あははは~~」との冗談を言いながら大きな声で笑う姿も見られています。先月の報告書の考察の根拠を確認できる事例になったと考えます。

 デイサービスでは、睡眠障害の基礎である生活リズムの構築、5000ルクスの光による体内時計のリセットなど睡眠障害approach methodを進めると共に、バイタルサインなどから状態把握も進めていきます。

【先月(6月)の報告書の考察】

 小さな変化として、5月より血圧が少し上昇し、食事量の変動も少なくなっています。変化の真因を考察すると、血圧の上昇は睡眠障害による生活リズムの乱れが解消され、朝の眠気が解消されたことで血圧が上昇、安定に繋がったと考えます。5月の血圧の低下は、4月下旬の風邪から体調不良となり、体調不良から食事意欲も減退し体力も低下したと考えます。体力の低下から、座っているだけで疲れてしまい疲労感から日中の寝ている時間が多くなり、夜間の睡眠障害に派生し生活リズムの乱れに繋がったと考えています。睡眠障害の乱れから朝や日中の眠気が強くなり、眠気が強いことで自律神経の副交感神経が優位に働き血圧が低下したと考えます。6月の血圧の上昇から考察すると、朝の眠気が解消され自律神経の交感神経が優位となり、しっかり覚醒していることで血圧が安定していると考えます。睡眠障害が解消され眠気が無くなったことで食事を食べる時間も安定し、食事量の増加となり、結果として生活リズムの安定に繋がっていると考えます。

 6月に入り午後になるとマッサージチェアや窓の周辺まで歩くことや帰宅の発言も聞かれることが増加しています。午後になると多動傾向になる真因は、上記の変化から体調がよくなり、元気になったことで認知機能が上がり自己実現(自己決定・自己選択=自分らしさ)によって行動の変化が出ていると考えています。

「鳥さんからの一言」・・・

生理的欲求(食事、排せつ、睡眠)が満たされることの重要性を肌で感じ、状態が安定するための基礎であることを再確認できました。

№1 体調不良後のアセスメント・・・               2021年4月5日(月)

 4月の体調不良(風邪症状)から回復し、食事量なども日によって変動は見られますが、主食は平均9割、副食7割程摂取しています。食事量の増加と比例して元気な時の言動が顕著に見られており、環境因子(外部環境、内部環境)によって拒否、焦燥、易怒などの行動・心理症状が見られています。

 特に環境因子の中の外部環境による刺激から焦燥、易怒、などの症状が派生しています。外部環境とは、物質的環境と人的ストレスに分けることができますが、A様は特に人的ストレスの影響を大きく受けています。人的ストレスには、職員、他利用者様、見学者など本人以外の人のことを示しており、A様の”こころの動き”(心理的苦痛=孤独感、寂しさetc)とのバランスによって大きく変化しています。A様の”こころの動き”を表すサイン(陰性症状)として、背筋が伸びた座り方、職員と目を合わさないことや下を向くことが多い、落ち着いた声の大きさと丁寧な口調、テレビではなく外(玄関の方)を見ることが多いなどが、陰性症状の”こころの動き”のシニアサインと考えます。

 支援のポイントとして、パーソナル・ゾーン(心の縄張り、快・不快の距離)を理解し、どの距離感がA様にとって安心できる距離感であるかの理解が大切と考えます。

「鳥さんからの一言」・・・

バイタルサイン、環境因子への理解、コミュニケーションの基礎がとても大切であると感じた事例でした。

令和6年10月26日         空き情報

< ぱ-そんらいふ    ほうとく>  定員  10名

曜 日
空き人数 2 2 1 0 0 2

 

< ほうとく 弐番館 >  定員 10名

曜 日
空き人数 0 0 0 0 0 0 0

 

<ぱ-そんらいふ久野>      定員 10名

曜 日
空き人数 1 3 1 2 3 1

 

<ぱ-そんらいふ南鴨宮> 定員 10名

曜 日
空き人数 2 1 3 0 5 2